査定のご相談で、いちばん多くいただくご質問があります。「結局、いくら残りますか」
売却価格がそのまま手元に入るわけではありません。仲介手数料、印紙税、登記費用、測量費、解体費、残置物の処分費 — 差し引かれるものは意外に多く、ローンが残っていればその返済も同じ日に行います。
本記事では、売却でかかる費用を支払う順番どおりに並べ、売却価格から手取り額を逆算する方法を整理します。3,000万円で売った場合の試算表も載せました。金額はすべて目安であり、実際の額はご条件により変わります。
費用の合計の目安
売却価格の
4〜6%
解体や測量が入ると増えます
いちばん大きい費目
仲介手数料
上限が法律で決まっています
見落としやすいもの
譲渡所得税
支払いは翌年の確定申告です
🧾 まず全体像 — 費用は「4つのタイミング」で出ていきます
費用の一覧をただ並べても、実際の資金繰りはわかりません。いつ、いくら出ていくかで並べたほうが役に立ちます。売却の費用は、大きく4つのタイミングに分かれます。
| タイミング | 主な費用 | 手元の現金が必要か |
|---|---|---|
| ① 売り出す前 | 測量費、解体費、残置物処分費、ハウスクリーニング | 必要です(売却代金より先に出ます) |
| ② 契約のとき | 印紙税、仲介手数料の半金 | 手付金を受け取るため、実質は差引きです |
| ③ 決済・引渡しのとき | 仲介手数料の残金、抵当権抹消・住所変更登記、司法書士報酬、ローン一括返済、日割り精算 | 売却代金から差し引けます |
| ④ 翌年 | 譲渡所得税・住民税(利益が出た場合) | 手取りから取り置きが必要です |
資金面で気をつけていただきたいのは①と④です。②③は売却代金の中から精算できますが、①は売れる前に自己資金から出ていき、④は売れた翌年に来ます。決済日にすべて終わったとお考えになって使ってしまうと、翌年の納税で慌てることがあります。
💰 仲介手数料 — 上限の計算と消費税の扱い
費用の中で最も大きいのが仲介手数料です。宅地建物取引業法で上限が定められており、これを超えて請求することはできません。よく使われるのが次の速算式です。
売買価格が400万円を超える場合(速算式)
(売買価格 × 3% + 6万円) × 1.1
※ 売買価格は消費税を除いた金額で計算します。土地は非課税であり、個人の方が売却される中古住宅も課税されないため、通常はそのままの売買価格で計算して差し支えありません。最後の 1.1 は、手数料そのものにかかる消費税です。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(税込) |
|---|---|
| 1,000万円 | 396,000円 |
| 2,000万円 | 726,000円 |
| 3,000万円 | 1,056,000円 |
| 5,000万円 | 1,716,000円 |
| 8,000万円 | 2,706,000円 |
低額な物件については別の定めがあります。売買価格が800万円以下の場合、売主・買主それぞれから受け取れる上限が33万円(税込)とされています。地方の空き家や再建築が難しい土地など、価格に対して調査の手間が大きい物件を扱えるようにするための規定です。ご依頼の前に金額のご説明を受け、ご承諾のうえで進めることになります。
支払うタイミングは、契約時に半金・決済時に残金が一般的です。ただし全額を決済時にまとめる取り決めもあります。媒介契約を結ぶ段階で、金額と支払時期の両方をご確認ください。当社では媒介契約書とあわせて仲介手数料支払約定書をお渡しし、金額・支払日・決済日が動いた場合の扱いまで書面で明示しています。
🖊 印紙税 — 電子契約なら不要になります
売買契約書には印紙税がかかります。売主・買主が1通ずつ保管する場合、それぞれが1通分を負担するのが通例です。不動産の譲渡に関する契約書には軽減措置が設けられており、軽減後の金額は次のとおりです。
| 契約金額 | 印紙税額(軽減後) |
|---|---|
| 100万円超 500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30,000円 |
| 1億円超 5億円以下 | 60,000円 |
金額としては大きくありませんが、電子契約で締結した場合、印紙税はかかりません。課税の対象が紙の文書であるためです。当事者が遠方にいらっしゃる、持ち回りで押印を回すと日数がかかる、といった場面では検討の余地があります。なお軽減措置には適用期限が設けられていますので、実際にご契約される時期の税額は国税庁の最新のご案内でご確認ください。
📜 登記費用と司法書士報酬 — 売主が負担するのはどこまでか
不動産の名義を買主に移す所有権移転登記の費用は、原則として買主の負担です。売主側で負担するのは、引き渡せる状態に整えるための登記にあたる部分です。
- 抵当権抹消登記 — 住宅ローンが残っている場合。登録免許税は不動産1個につき1,000円(土地と建物なら2,000円)
- 住所・氏名変更登記 — 登記簿の住所が現住所と違う場合。お引越しやご結婚で変わっているケースは多くあります。登録免許税は不動産1個につき1,000円
- 相続登記 — 亡くなった方の名義のままでは売却できません。先に相続登記を済ませる必要があります
- 司法書士報酬 — 抹消・住所変更で概ね1万〜3万円程度。相続登記が絡む場合は別途かかります
実務で多いのが住所変更登記の見落としです。決済当日に登記簿と本人確認書類の住所が合わないと手続きが止まりますので、売却をお考えの段階で登記簿を取り寄せ、ご住所とお名前を照合しておくことをおすすめします。当社では媒介契約の段階でこの確認を行っています。
📌 登記費用の見積りと手続きの可否について
登記費用の正確な見積り、どの登記が必要かの判断、相続登記の進め方といった登記手続きの具体的なご相談は司法書士が担当します。当社は決済に向けた段取りと、司法書士のご紹介・日程調整を担当いたします。
📐 測量費・解体費・残置物処分費 — 売り出す前に出ていくお金
ここが手取りを大きく動かす部分であり、同時に売却代金より先に自己資金から出ていく部分です。必ず必要なわけではなく、物件の状況と売り方によって決まります。
| 費目 | 目安 | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| 確定測量 | 35万〜90万円程度 | 土地売買、買主が新築予定、実測売買、境界標がない場合 |
| 建物解体 | 木造で坪あたり4万〜6万円程度 | 更地渡しの取り決めをした場合。付帯工事や残置物があると増えます |
| 残置物の処分 | 戸建1棟で20万〜60万円程度 | 家財を残したまま引き渡さない取り決めの場合 |
| ハウスクリーニング | 3万〜10万円程度 | 任意です。内見の印象を上げたい場合 |
| 建物状況調査(インスペクション) | 5万〜10万円程度 | 任意です。買主の安心材料としてお使いになる場合 |
解体については、更地にしてから売るのが常に有利とは限りません。建物を取り壊すと、翌年の固定資産税で住宅用地の特例が外れて負担が上がります。売れるまでに時間がかかると、その分が積み上がります。解体は「買主が決まってから、契約の条件として行う」ほうが持ち出しの期間が短くて済みます。当社では、更地渡しと現況有姿の両方で査定額をお出しして、差額と費用を並べてご判断いただいています。
残置物についても同じ考え方です。すべて処分してから売るのか、家財を残したまま現況有姿で売るのか。買取業者や投資家が買主となる場合、残置物込みで引き受ける前提の価格が出ることもあります。処分費をかけた分だけ価格が上がるとは限らないため、費用と価格差を比べてお決めください。
🏦 住宅ローンの一括返済と、決済当日の日割り精算
ローンが残っている物件は、決済日に売却代金で一括返済し、同時に抵当権を抹消します。買主からの代金入金、返済、抹消登記、所有権移転が同じ日に連続して行われるため、事前の段取りが必要です。
- 繰上返済手数料 — 金融機関により無料〜5万円程度。窓口でのお手続きのほうが高くなる場合があります
- 残債の確認 — 金融機関に返済予定表または残高証明をご依頼ください。決済日時点の元金・利息・手数料の合計をお出しいただきます
- 売却代金で足りない場合 — 不足分を自己資金でご用意いただくか、任意売却など別の方法の検討になります。早い段階で残債と査定額を突き合わせておくことが重要です
あわせて、決済日には日割りの精算を行います。これは費用というより清算金のやり取りで、売主にとって受け取り側になるものもあります。
| 項目 | 売主から見た扱い |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 売主が1年分を納付済みのため、引渡日以降の分を買主から受け取ります |
| 管理費・修繕積立金(マンション) | 同様に日割りで精算します |
| 賃料(オーナーチェンジの場合) | 引渡日以降の分を買主へお渡しします |
| 敷金(オーナーチェンジの場合) | 返還義務を引き継ぐため、買主へお渡しします(手取りが減る要素です) |
固定資産税の起算日は、関東では1月1日、関西では4月1日とする慣行があり、契約書の定め方で金額が変わります。数万円単位の差が出ますので、契約書の条項をご確認ください。当社では決済の前に清算書を作成し、受け取る額と支払う額を1枚に並べてご確認いただいています。
🧮 3,000万円で売った場合の試算
ここまでを一つの表にまとめます。相模原市内の中古戸建を3,000万円で売却、住宅ローン残債1,200万円、測量と解体は不要という前提での試算です。あくまで一例で、実際の金額はご条件により変わります。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 売買価格 | 30,000,000円 | — |
| 仲介手数料 | − 1,056,000円 | 上限額(税込) |
| 印紙税 | − 10,000円 | 紙の契約書1通分 |
| 抵当権抹消・住所変更登記 | − 4,000円 | 登録免許税(土地・建物 各2件) |
| 司法書士報酬 | − 25,000円 | 目安 |
| 繰上返済手数料 | − 22,000円 | 金融機関により異なります |
| 住宅ローン一括返済 | − 12,000,000円 | 残債 |
| 固定資産税等の精算 | + 60,000円 | 買主から受け取る分 |
| 決済日の手取り | 16,943,000円 | この時点の残額です |
| 引越し費用 | − 200,000円 | お住まいだった場合 |
| 譲渡所得税・住民税 | 要確認 | 翌年の確定申告。税理士にご確認ください |
この例では、ローン返済を除いた費用の合計が約111万円。売買価格の約3.7%にあたります。ここに測量費や解体費が加わると5〜8%まで上がることもありますので、売却価格の4〜6%は費用としてみておくというのが、最初の目安の置き方としては現実的です。
📅 譲渡所得税 — 別枠の大物です
ここまでの費用は決済までに出ていくものでしたが、譲渡所得税と住民税は翌年です。売却で利益が出た場合に、翌年の確定申告で納めます。
考え方の枠組みだけ整理します
課税されるのは売却価格そのものではなく、売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)で計算した利益の部分です。取得費には購入代金や購入時の諸費用が、譲渡費用には仲介手数料・印紙税・測量費・解体費などが含まれます。所有期間が5年を超えるかどうかで税率が変わります。また、ご自宅を売却した場合には3,000万円の特別控除など、いくつかの特例が設けられています。
ただし、ご自身のケースで税額がいくらになるか、特例が使えるかどうかの判断は、税理士のご確認が必要です。取得費が不明な場合の扱い、相続で取得した不動産の取得費の引き継ぎ、居住用の特例の要件、買換えとの組み合わせ — いずれも個別の事情で結論が変わります。本記事では計算には踏み込みません。
実務でお伝えしているのは「手取りの全額を使わないでください」ということです。決済日にまとまった金額が入るため、翌年の納税があることを忘れやすくなります。売却をお決めになった段階で税理士にご相談いただき、概算だけでも把握しておかれると安心です。ご相談先がなければ、当社から税理士をご紹介いたします。
✅ 手取りを減らさないための5つのポイント
- 売り出す前の費用は「本当に必要か」を先に検討する — 測量・解体・残置物処分は、かけた分だけ価格が上がるとは限りません。両方の条件で査定を出して比べます
- 解体は買主が決まってからにできないか考える — 更地にすると翌年の固定資産税の負担が上がります。契約の条件として行えば持ち出しの期間が短くなります
- 領収書と契約書を保管しておく — 購入時の契約書、仲介手数料や測量費の領収書は、翌年の申告で取得費・譲渡費用の証明になります。捨てないでください
- 住所変更登記の要否を早めに確認する — 決済当日に判明すると手続きが止まります
- 残債と査定額を最初に突き合わせる — 売却代金でローンを返し切れるかは、売り出す前に確認する事項です
📌 専門家にご相談いただきたいこと
譲渡所得税の計算、特例の適用可否、確定申告のお手続きといった税務のご相談は税理士が担当します。登記費用の見積りや相続登記の進め方といった登記のご相談は司法書士、測量の実施や筆界確認書の作成は土地家屋調査士にお願いいたします。当社は不動産会社として、費用の全体像の整理、必要な工事や測量の範囲の見極め、専門家のご紹介と段取り、契約書への条項の反映を担当いたします。
まとめ
- 費用は①売り出す前 ②契約時 ③決済時 ④翌年の4つのタイミングに分かれます
- 資金面で注意が要るのは①(自己資金から先に出る)と④(翌年の納税)です
- 最大の費目は仲介手数料。上限は(価格×3%+6万円)×1.1、800万円以下は33万円(税込)まで
- 印紙税は電子契約なら不要です
- 売主が負担する登記は抵当権抹消と住所変更。所有権移転は買主負担が原則です
- 解体・測量は、かけた費用の分だけ価格が上がるとは限りません。両条件で査定を比べます
- 決済日には固都税・管理費・賃料・敷金の日割り精算があります
- 費用の合計はおおむね売却価格の4〜6%。譲渡所得税は別枠で、税理士にご確認ください
「結局いくら残りますか」に、最初にお答えします
アライアンス株式会社では、東京・神奈川を中心に不動産の売却をお手伝いしています。査定額をお出しする際に、仲介手数料・登記費用・測量や解体の要否まで含めた「費用の内訳」と「手取りの見込み」を1枚にまとめてお渡しします。更地渡しと現況有姿のように条件が分かれる場合は、両方を並べて差額をご覧いただけるようにいたします。ローンの残債がいくらか分からない、という段階からで構いません。無料でご相談いただけます。
📞 042-703-5901
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